研究紹介(論文):火星にかつて存在した水の水質復元に成功(その2)

陸域環境領域の福士圭介教授、関根康人客員教授(東工大ELSI所長)、米国NASAジョンソンスペースセンターのElizabeth B. Rampe博士らは火星にかつて存在した水の水質復元に成功しました。前報(Fukushi et al., 2019)につづき、火星ゲールクレータにおける2例目の水質復元です。

前報では火星探査車Curiosityが探査した中で最も古い時代の水を対象とし、その時の水はほどほどの塩分(ラーメンスープ程度)、pHは中性かつ周りの岩石からエネルギーを取り出せる水であったことを示しました。今回はより新しい時代の水を調べ、その塩分は海水の数倍までしょっぱく、やや酸味がある水であることを示しました。さらに酸化還元非平衡はほとんど認められませんでした。火星の海や湖の跡には地球でみられるようなCa・Mg炭酸塩鉱物があまり認められません。比較的最近に近い水のpHが弱酸性であれば、それらは溶けてなくなったかもしれない。というのが本研究の推測です。

雑誌名:Geochimica et Cosmochimica Acta
論文名:Reconstruction of pH, redox condition, and concentrations of major components in ancient liquid water from the Karasburg member, Murray formation, Gale Crater, Mars
発表者名:Fukushi K, Sekine Y, Rampe E.B.
論文はこちら(出版社のページ。2022年5月11日まで無料で閲覧できます)